information
- 所在地
- 広島県福山市三之丸町
- 用途
- 飲食店
- 構造
- RC造1階部分
- 床面積
- 76.64㎡
- 施工
- 大和建設
- 厨房設備
- ダイテック
- 完成年
- 2024.9.26.
- 写真
- 長谷川 健太
background
福山市から北へ車で1時間の場所に位置する神石高原町。
山間部の豊かな自然に囲まれ、そこで育まれた神石牛を扱う焼肉店の計画である。
神石高原町では過疎化が進行しており、人口減少が深刻な問題となっている。
この地域の活性化に取り組むMSERRNT(マサーント)は、地域資源を活かした様々なプロジェクトを展開しており、この店舗もその一環として計画された。
ここは単に美味しいお肉を提供するだけでなく、町の魅力を多くの人々に知ってもらうためのアンテナショップとしての役割も担う。
そこで福山市の中心部に位置する福山駅前が出店場所として選ばれた。
クライアントからは、幼少期に特別な日に親に連れていってもらい、初めて食べたファミレスでの味について話を伺った。
その時の高揚感が根底にあるような、カジュアルでありながら少し特別な時間を過ごせる場所を目指した。
design
神石高原町の魅力を知ってもらうことが目的ではあるが、そのことを全面に押し出す店づくりは避け、この場所の魅力を引き出すことにした。
既存の店内は四方がガラスで囲われており、天井には格子状の鉄骨構造体が組まれ、設備機器がむき出しのスケルトン空間だった。
また、施設の1Fは外部に開放され、公共通路のように人々が行き交う場所でもある。
その一部もテナントスペースにできたため、そこにはドリンクスタンドを併設し、店内外を一体的に使う場を作ることにした。
まず店内は神石牛が育つ牛舎の環境ー土・木・石ーをベースにし、焼肉特有の素材である金網をそれらと組み合わせることにした。
ロースターの排気は床下にダクトを埋設することでテーブル上部に換気扇を設けていない。
居心地の良い環境を作るためクライアントがこだわった点である。
排気はどこかで立ち上げる必要があるため、肉のショーケースと共に敢えてエントランス正面に配置し、太いダクトを金網で覆うことで印象的に仕上げた。
また無骨なスケルトンの天井や分電盤にも金網を重ねることで、ラフすぎる印象を抑え、空間に奥行きを与えるよう調整した。
ガラス張りの空間でプライバシーを確保しようとすると、ガラス面に壁を立てることになるが、サッシには凹凸があるため壁との間に隙間ができてしまう。
そこで隙間部分に小石を敷き詰め凹凸を吸収し、外にも石の印象が伝わるようにした。
外部には飼料を運ぶ台車をモチーフにした可動テーブルやベンチを設置し、テイクアウトやドリンクスタンドの利用者が集まり、賑わいが外観を作ることを期待している。
その賑わいに引き寄せられ、特別な時間をそこで過ごすことで、少しでも多くの人が神石高原町に興味を持ってくれることを願う。